市民ラジオの歴史

このサイトの最終更新日:2023.11.5

 市民ラジオとは、近距離の音声通信のための無線通信システムであり、誰でもどのような目的にでも使用することができ、無線機を入手後、何ら手続きをすること無しにすぐに使用することができるものです。

 米国の「Class C」及び「Class D」の「Citizens Radio Service」にならい1961年(昭和36年)に発足した制度であり、 当初は給電線や外部空中線及びPTTスイッチ付きマイクの使用が可能でしたが、1963年(昭和38年)に規制強化が行われこれらの使用はできなくなりました。携帯型の無線機が多くのメーカーによって製造され、個人や個人事業者、企業などにおいて使用されました。市民ラジオの大きな特長は、それまでの150MHz帯や460MHz帯の簡易無線局と異なり、異免許人間で通信を行うことができたことです。

 1982年(昭和57年)以前は簡易無線局として無線局の免許が必要でしたが、 1983年(昭和58年)からは不要となり、入手後すぐに使用することができるようになりました。市民ラジオの最大空中線電力は0.5Wですが、0.01Wを超える無線局としては唯一の免許不要の無線局 (登録局を除く。) として、電波法令上極めて特別な存在でしたが、2010年(平成22年)の電波法改正により免許不要の無線局の最大空中線電力が1Wとなったため、もはや免許不要の無線局としては特別な存在ではなくなりました。

  誰でもどのような目的にでも使用することができる近距離の音声通信に対するニーズは、1989年(平成元年)に制度化された無線電話用の特定小電力無線局や2008年(平成20年)に制度化された351MHz帯デジタル簡易無線局(登録局)で吸収できるといわれております。また市民ラジオは、26-27MHz帯を使用するため空中線が大きくなることや雑音に弱い振幅変調を使用していること、割り当てられた周波数が8波に限定されていること、電離層伝搬による遠隔地からの混信があること、給電線を使用できないことなど他の近距離用の音声通信システムに比べて不利な条件があります。さらには、2005年(平成17年)施行の新技術基準に適合するメーカー製無線機は存在せず、旧技術基準の無線機の使用期限が2022年(令和4年)11月30日であることから、旧基準の全ての無線機がこの日以降使用できなくなるため、事実上の市民ラジオの消滅が危惧されてきました。

 一方、2010年(平成22年)には個人、2013年(平成25年)には企業によって改造された無線機に対する新基準に基づく技術基準適合証明が行われ、その後両者による技術基準適合証明を受けた無線機の台数が徐々に増加しつつあります。平成27年6月に電波監理審議会から答申された「平成26年度電波の利用状況調査の評価結果」においては、市民ラジオは、「今後、大幅な増加は見込まれないものの、無線局免許や無線従事者資格が不要なことから人気は根強く続くものと考えられる。」と記載されており、市民ラジオの将来に幾分明るい兆しが見えてきています。2016年(平成28年)には、新技術基準対象の無線設備としては初めて、企業が工事設計認証を受けました。

 電波監理審議会から2018年(平成30年)7月に答申された「平成29年度電波の利用状況調査の評価結果」においては、2014年(平成 26 年度)から2017年(平成 29 年度)までの全国における出荷台数が515台と記載されています。平成25年度までの技術基準適合証明を受けた新技術基準対応の無線設備は178台ありますので、693台存在することになります。

 2022年(令和4年)11月30日をもって旧技術基準の無線設備は全て利用できなくなる予定でしたが、2021年(令和3年)8月3日公布・施行の無線設備規則の改正により、旧技術基準に基いて行われた技術基準適合証明、工事設計認証等が2022年(令和4年)12月1日以降も「当分の間」有効となりました。

(2022.1.2更新)

 

 

主 な 歴 史

2023.11.5更新

昭和24年(1949年) 7月 1日 米国でCitizens Radio Service(460Mc帯Class A、Class B)が制度化
昭和25年(1950年) 6月30日 電波法に基づく電波監理委員会規則が公布・施行、この中で簡易無線業務を規定(465Mc)
昭和25年(1950年)12月 1日 電波監理委員会規則の改正(463Mc、467Mc)
昭和26年(1951年) 3月19日 早稲田大学に対して日本で最初の簡易無線局(467Mc)が免許
昭和27年(1952年) 3月24日 米国でCitizens Radio Serviceに26-27Mc帯無線操縦(Class C、27.255Mcのみ)が追加
昭和33年(1958年) 9月11日 米国でCitizens Radio Serviceに26-27Mc帯無線電話(Class D、22ch)と無線操縦(Class C、5ch)が追加
昭和34年(1959年) 4月15日 米国でCitizens Radio Service Class Dに27.255Mcが追加
   
昭和36年(1961年) 6月 1日 市民ラジオ関係改正省令が施行(運用、手続、技術基準)
昭和36年(1961年) 8月 4日 市民ラジオ関係告示が施行 (周波数、空中線電力、証票様式、業務書類等の取り扱い)
昭和36年(1961年) 9月20日 26機種が初めて型式検定に合格
昭和36年(1961年)11月 1日 関東電波監理局において初めての市民ラジオを免許
昭和37年(1962年) 1月 1日 無線機器型式検定規則が改正となり、改正規則に合致する機器に新たな型式名や検定番号を付与
昭和38年(1963年) 8月 1日 無線設備規則等が改正となり規制強化され、PTTスイッチ付マイク、給電線・外部空中線不可となる 、海上及び上空での使用が可能となる(海上では0.5Wのものは不可)、任意団体も免許可能となる
昭和42年(1967年) 3月 1日 免許状の様式が変更となる(1局に1枚の免許状)
昭和42年(1967年) 4月10日 証票が廃止
昭和48年(1973年) 5月18日 免許状の様式が変更となるとともに、呼出名称の形式が「地名+数字」から「地名+1文字または2文字のアルファベット+1〜100の数字」となる、証票が制定される
昭和50年(1975年)10月28日 告示が改正され、8ch内蔵0.5W機が認められる
昭和51年(1976年) 5月24日 8ch内蔵0.5W機が初めて型式検定に合格(松下電器製のRJ-35及びソニー製のICB-680)
昭和54年(1979年) 7月 4日 無線局免許手続規則が改正、省令に初めて市民ラジオの語が登場、市民ラジオは型式検定合格した機器であって無線電話の無線局に限定、情報システム導入を前提とした無線局事項書・工事設計書となる
昭和55年(1980年) 4月 1日 関東、東海及び近畿の各地方電波監理局において、市民ラジオの免許事務に情報システム導入、新規免許局の呼出名称が「地名+2文字のアルファベット+101〜999の数字」となる
昭和57年(1982年) 2月10日 政府の臨時行政調査会答申、答申に市民ラジオの免許制度廃止を記載
昭和57年(1982年) 4月22日 最後の型式検定合格機器(松下電器製、RJ-270)
昭和57年(1982年) 9月13日 特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則が改正となり、市民ラジオが技術基準適合証明の対象となった
昭和57年(1982年)10月 2日 財団法人無線設備検査検定協会が市民ラジオの無線設備の証明業務を開始
昭和58年(1983年) 1月 1日 電波法が改正となり、無線局免許が不要となる、電波法に「市民ラジオ」の語が登場する 、PTT スイッチ付マイク可となる、型式検定の対象からはずれる
昭和62年(1987年) 8月 8日 電波法施行規則が改正され、海上での使用制限が撤廃
平成10年(1998年) 4月23日 旧技術基準に基づく最後のメーカーによる技術基準適合証明(十和田オーディオによるICB-87R及びICB-33H)
平成12年(2000年) 2月28日 旧技術基準に基づく最後の個人による技術基準適合証明(ICB-600)
平成13年(2001年) 7月 4日 市民ラジオでは唯一の旧技術基準に基づく工事設計認証(十和田オーディオによるICB-87R)
平成16年(2004年) 1月26日 電波法が改正され、「市民ラジオ」の語が削除
平成17年(2005年)12月 1日 無線設備規則が改正となり、 旧技術基準に基づく無線設備の運用は平成34年12月1日以降は不可となる
平成21年(2009年) 7月 8日 波監理審議会から適当であると答申された「平成20年度電波の利用状況調査の評価結果」において,市民ラジオは運用されてはいるが、出荷台数は過去3年間で「0台」となっていると記載
平成22年(2010年) 6月 3日 個人が新技術基準の無線設備で技術基準適合証明を受ける(個人による技適は10年ぶり)
平成24年 (2012年)  7月11日 電波監理審議会から適当であると答申された「平成23年度電波の利用状況調査の評価結果」において、新スプリアス規定に対応した技適を取得したものがあるが、大幅な増加は見込まれないと記載
平成25年 (2013年)  4月 5日 民間企業が新技術基準の無線設備で技術基準適合証明を受ける(54台、民間企業による技術基準適合証明は15年ぶり)
平成27年 (2015年)  6月10日 電波監理審議会から適当であると答申された「平成26年度電波の利用状況調査の評価結果」において、 今後、大幅な増加は見込まれないものの、無線局免許や無線従事者資格が不要なことから人気は根強く続くものと考えられると記載
平成28年 (2016年)  8月10日 平成17年12月施行の新基準に適合する無線設備では初めての工事設計認証
平成30年 (2018年)  7月20日 電波監理審議会から適当であると答申された「平成29年度電波の利用状況調査の評価結果」において、 これまであった市民ラジオに関する記載なし
同評価結果に平成 26 年度から平成 29 年度までの全国における出荷台数が515台と記載
令和 3年 (2021年)  7月14日 電波監理審議会から適当であると答申された「平成29年度電波の利用状況調査の評価結果」において、
平成 29 年度から令和元年度までの全国における出荷台数が1,351台と記載
令和 3年 (2021年)  8月 3日 旧技術基準に基いて行われた技術基準適合証明、工事設計認証等が2022年(令和4年)12月1日以降も「当分の間」有効となる

 

第0部 昭和25年〜

(市民ラジオ前史)

 

市民ラジオのルーツ 2013. 6. 2更新

 

第1部 昭和36年〜昭和57年12月まで

(無線局免許必要)

 

官報資料版告知板(昭和36年3月22日) 2007. 8.25更新
昭和36年発足当時の制度 2009. 8.16更新
昭和37年の制度改正 2007. 5. 5更新
昭和38年の制度改正 2009. 8.16更新
昭和50年の制度改正 2006. 7.17更新
免許状の変遷 2007. 5. 3更新
証票の変遷 2006. 7.17更新
免許申請書の変遷 2005.10. 1更新
無線局事項書及び工事設計書の変遷 2005.10. 1更新
呼出名称の変遷 2007. 5. 3更新
型式検定合格機器 2007.11. 4更新
8CHの検定合格機器 2005. 9.18更新
無線局数 2013. 6. 2更新

 

第2部 昭和58年1月〜現在

(無線局免許不要)

 

昭和58年の制度改正 2003. 9.25更新
昭和62年の制度改正 2006. 7.17更新
市民ラジオの現行制度 2013. 6. 2更新
技術基準適合証明等を受けた機器(旧技術基準) 2008. 2.13更新
技術基準適合証明等を受けた機器(新技術基準) 2023.11. 5更新
電波の利用状況調査の評価結果 2023.11. 5更新
旧基準の無線機の運用が2022年12月1日以降も当分の間可能となる 2022. 1. 2更新

 

その他
解説記事 2009.10.30更新
市民ラジオの語について  2007. 9.27更新
型検合格機 、技適証明機について 2008. 5.25更新
26-27MHz帯を利用する免許を要しない市民ラジオ以外の無線局 2013. 6. 2更新
ラジコン用27MHz帯簡易無線局 2013. 6. 2更新
公共用トランシーバ 2008. 5.25更新
26MHz帯使用するコンテナ荷役用無線システム 2013. 6. 9更新
地域周波数利用計画策定基準一覧表(26175-26755kHz) 2013. 7.13更新
地域周波数利用計画策定基準一覧表(26958.5-27154.5kHz) 2013. 7.16更新
臨時行政調査会答申(昭和57年) 2013. 6. 2更新
パーソナル無線 2013. 6. 2更新
無線電話用の特定小電力無線局 2013. 6.19更新
351MHz帯デジタル簡易無線局 2015.11. 8更新

 

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